家族葬エピソード734：「お父様にお持たせしたい物はありませんか？」：家族葬エピソード｜【公式】大分市・別府市・豊後大野市での家族葬・葬儀・葬式なら備庵（ビアン・びあん）・判田台会館

家族葬エピソード734：「お父様にお持たせしたい物はありませんか？」

故人様は80代の男性の方でした。

朝、ご挨拶に伺うと少しだけ疲れた表情の喪主様がいらっしゃいました。
故人様の娘さんでした。

「おはようございます。お疲れではないですか」
と伺うと、
「うん、大丈夫」
とのお返事がありました。

お式の準備をさせて頂いている間、ずっと私達のそばにいらっしゃった娘様。
黙々とご覧になられている様子が気になり、
「この様な感じになります」
とお伝えすると、安心した様に頷かれ、それから私達に時々話しかけてくださいました。

お話のほとんどが思い出のお話...
小旅行が好きで、よく家族揃って出かけちょっとした旅の思い出のお土産を買っていたとか...
「それではお父様にお持たせしたい物はありませんか？」
と、伺うと、
「あ！ある」
と何かを思い出したご様子。
「明日持ってきていい？」
と、仰るので
「ぜひに」
と、頷くととても嬉しそうなご様子でございました。

翌日、お持ちいただいたのは各地を巡った際にご購入された『手ぬぐい』でした。
お別れの時にお花と共に沢山の思い出の手ぬぐいを手向けました。
故人様のそのお姿は幸せそうにみえ、少し目頭が熱くなりました。

娘様は涙が止まりませんでしたが、
「おとうさん。ありがとう」
と微笑んでおられました。

出棺の時、車の中から頭を下げてくださった娘様。

火葬場から戻ってきた担当者から、
「ありがとうって言ってたよ」
と聞き、嬉しく思いました。