家族葬エピソード422：｢明るく送ってやらんとね｣
故人様は90代後半の女性でした。
ご長男にあたる喪主様は、
「もう、大往生やけんな」
と明るい表情でおっしゃいました。
長女様も明るく集まったご親族様と控室で談笑されていました。
「明るいご家族だなぁ」それが最初の印象でした。
ご近所さまや会社の方々にもお付き合いが多い喪主様と長女様は次々にみえる参列の方にご挨拶されていました。
そしてお参りの方が帰られたあと、私達スタッフに
「コロナやけんな。お参りだけでいいよ！て言ってるんや」
とサラリと仰るこの御姉弟。
今回はお別れの言葉でお孫様、謝辞で喪主様にマイクの高さを合わせていただいたのですが、微調整もなく...
「あ！良い良い！これくらいで良いよ」
と見事なくらい皆様同じ返答。
最後に、お帰りになる皆様にお弁当を配っていただきましたが、渡す人を間違えてしまった長女様。
「あ！良い良い！私達の後で買おう！」
と豪快に即決。
この竹を割ったような性格のご家族だから皆様から慕われているんだろうな、としみじみ感じました。
お式の最後、小柄だったお母様のエピソードを司会者がナレーションしましたが、その時はじめて涙された皆様でした。
お花入れの時、
切花でいっぱいになった故人様をご覧になりながら
「キレイやなー」
「こんなにいっぱいの花にかこまれていいなー」
と明るくお話しされている皆様でした。
が...たまたま隣に立っていた私に喪主様が
「明るく送ってやらんとね」
と他の親族の方に聞こえないようにそっと仰いました。
その時私は、喪主様が遺族代表としてご親族の方にお気をつかっていらっしゃる事を知りました。
一瞬だけ悲しい表情をみせた喪主様でしたが、すぐに明るく振る舞い霊柩車に乗り込みました。
少しだけ本当の気持ちをみせてくださった喪主様。
「少しでも安心感をもっていただけたかな」と改めて振り返ったお式でした。
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