家族葬エピソード314:「そんなに泣くとお母さんが悲しむよ」

20年ほど前にお父様を亡くし、母一人、娘一人で生きてこられ、
娘様は、結婚しお子様にも恵まれ、
お母様はお一人で生活をしていて、病気もほとんどせずにお元気でいらしたそうです。

そのお母様との突然の別れ、、予想もしていなかった別れに、娘様はひどく動揺し、当日は現実を受け止めることが出来ない状態でした。

支えてくれたのは、ご主人と息子様、そして義理のお父様とお母様でした。
急なことで、皆様もただ驚くばかりでしたが、娘様のことを想い気丈にされてました。

2日目、ご様子を伺いにいくと娘様は少し落ち着いたようにみえましたが、すぐにずっと涙されていたとわかるほどでした。
「結婚してからは忙しくてあまり実家に帰れてなかったこと、お母さんはいつも明るく元気だったので心配なんてしてなかった、、」
と少しづつお話をしてくれました。
もっと、会いに行けばよかった、一緒に旅行に行きたかった等々、後悔ばかりが頭の中を渦巻いているようにポツリポツリポツリとお話され、涙をぬぐうお姿には心をしめつけられるようでした。

お別れの当日、お花入れの用意をする為お柩の蓋を開けさせていただき、故人様のお顔を間近で拝見させていただきました。
お化粧をされてないお顔でしたので、娘様に「口紅をつけてあげますか?」と尋ねると、コクリとうなずかれたのでご用意をし、紅筆をお渡ししました。
ゆっくりと丁寧につけられてました。
故人様のお顔も少し明るく穏やかなお顔になられた気がしました。

ただ、お花入れが始まると、
「お母さん、お母さん」
と泣き叫ぶ娘様のお姿がありました。
お花を手向けることもできず、故人様のお顔をずっと撫でられてました。
あまりの悲しみの大きさに周りの皆様もお声をかける事もできないほどでした。
私も何も言葉がでず、ただ娘様の背中に手を添えるだけでした。

立つこともままならないほど泣き続けられてた時に、義理のお母様が
「口紅をひいてくれて、お母さん嬉しいと思うよ、そんなに泣くとお母さんが悲しむよ、、」
と、しぼりだすようにお声をかけられ、最後は合掌にでお柩の蓋を閉じさせていただきました。

娘様が、少しづつでもお元気になられるようにと、願うばかりです。


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