家族葬エピソード309:「もうすぐ百歳って言ってもやっぱり離れるのは嫌だ」

早くに奥様を亡くされ小さいお子様を男手ひとつで育てられた故人様。
優しくてユーモアがあり、育児と仕事を両立され頑張ってこられたお背中を娘様たちはずっと見てこられたそうです。

喪主を務められた長男様はお式のあとのご挨拶で
「1番思い出に残っているのは、海岸の岩場を足元気をつけろよと声をかけながら釣りに連れて行ってくれたことです。
孫と曾孫を可愛がり施設に顔を見せに行くと穏やかに微笑んでくれていました」
と故人様との思い出を語っておりました。

遠方から駆けつけられたお孫様は到着してからお式の直前までお柩の近くで安らかなお顔を見つめられただ涙を流すばかりでございました。
入所されていた施設の方がお参りに来られ
「本当に穏やかで施設の皆も大好きでした。
他の利用者様も入院から帰ってこないことを心配されています」
と涙を流しながら長女様に声をかけられると、それまで気丈に振舞っていた長女様も大粒の涙を流され
「お父さんが穏やかに過ごせたのも施設の皆さんのおかげです。ありがとうございました」
と握手をされておりました。

お別れのお花入れでは、たくさんのお花とお孫様がまだ小さい曾孫様と一緒に折られた折り鶴を入れられ長女様が
「向こうでお母さん待ってるからね。お母さんに会ったら皆のことは心配するなって伝えてよ」
と声をかけお顔に触れられておりました。
「いくら声をかけても足りない。もうすぐ百歳って言ってもやっぱり離れるのは嫌だ」
とご親族の言葉を聞かれると喪主様が堰を切ったように泣かれ故人様との別れを惜しまれておりました。

朝は降っていた雨も止み晴れ渡る空の下ご出棺となりました。