家族葬エピソード296：「思い出した『やせうま』」
故人様は90代の女性でした。
「8人兄弟の長女として生まれ、父親の亡き後、故人の母と兄と故人の3人で商売を営み、下のご兄弟達を育ててきました」
喪主である息子様はそうおっしゃいました。
頑張り屋で強く逞しい母。誰もがそう認めるお方だったようです。
贅沢を言わない方だったとのことで、お供え物もたった一つ、【やせうま】でした。
「なんも思い出さんでなぁー！これもやっと思い出したんよ！」
とにこやかに微笑みながら喪主様はおっしゃいました。
「お別れの時、是非このやせうまも持って行っていただきましょう」
と提案すると、
「そうやな！それがいいわ！」
と喪主様は豪快にわらいました。
親族の方々はそんな私達が気になられた様子で、
「なになに？」
とまわりに集まってこられ、話の内容をお知りになり笑いにあふれました。
葬儀がはじまり、喪主様のご挨拶になりました。
「あと3年で100歳という事で残念ではありますが、この歳まで大きな病気もせず、最後は眠るように亡くなりました。
痛いとか食べれんとかも無く、大往生やと思います。」
と言うと、ご兄弟の方やご家族の方々は
『うんうん』
と明るい表情でと頷かれていました。
お別れの時、皆様、最初にお話ししていたのを覚えていらっしゃり、１番に【やせうま】持ってこられました。
ワイワイと賑やかに全員で手向けていき、お葬儀ではありましたが、とても和やかに時間が過ぎていきました。
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