家族葬エピソード263:「父は散歩に行きたくてウズウズしてるんじゃないかな」

「憎まれっ子世にはばかる」を座右の銘に、日頃から心に留めていらっしゃったという故人様。

晩年はハーモニカやお散歩、グランドゴルフと多趣味でいらっしゃったそうで、お亡くなりになる3週間前までは悠々自適に暮らしていらっしゃったとお伺いいたしました。
突然のお別れとなった中で
「本人は自由に生きた90年間。好きなように生きたので悔いはなかったんじゃないのかなと思います」と娘様。

いつもトレードマークの帽子を身に付けタオルを首に巻いていらっしゃった生前のお姿そのままに、満面の笑みを浮かべた故人様らしいお写真をご遺影写真として選ばれました。

遠方から到着されたお孫様は到着されてすぐに故人様の元へ向かいお顔を見られ、故人様がお好きだったタバコの銘柄をお供えされました。
せっかくなので...と、お柩の蓋をお開けし、故人様のお顔のすぐそばに手向けていただきました。
お孫様の優しい想いに触れ「おじいちゃん嬉しいでしょうね」と声を掛けると涙を溢されたお孫様。
言葉はなくともおじいちゃんっ子だったことが充分に伝わってまいりました。

お通夜では、ご近所の方やご友人も多くお参りに来られお人柄が偲ばれました。

翌朝ご挨拶に伺い、お柩の前にある香炉の掃除をしようと覗くと、火のついたお線香とともに一晩中絶やすことなく常にお線香をあげられていたのがわかるほど、お線香の燃えかすでいっぱいでした。
このお仕事に携わるようになって気付いた一目見て分かること...それは、朝の香炉。
故人様がご家族様にどれだけ大切に、大事に思われているかが分かります。朝から心があたたまった瞬間でした。

お式も滞りなく進み、たくさんの色とりどりのお花や食べ物を思い思いに手向けていただき、最後は故人様がお好きだったお酒をみなさまお一人ずつ故人様のお口に含ませられました。

「これからは散歩もできるし、しばらく呑めなかったお酒も呑める。
タバコも吸えるし、好きだったバナナも食べれる。
あっちでも好きなように楽しく過ごしてくれたら...」
と、願われてのご出棺となりました。

冬の寒さが続いていた日々の中で、ご葬儀当日だけは冬とは思えないとても暖かい良いお天気で、お散歩日和の日でした。
「父は散歩に行きたくてウズウズしてるんじゃないかな」
とおっしゃった娘様のお言葉で見上げた空は、故人様の旅立ちにふさわしい青空が広がっていました。


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