家族葬エピソード231:「優しくて時々おちゃめなじいちゃん」

故人様は70代の男性でした。

ご主人の突然の死を受け入れることができず、奥様は激しく動転されていました。
(どうして?朝はいつもどおりに仕事にでかけたのに)
そんな思いが溢れ震える手がとまりませんでした。

まわりの親族の方も悲しみに暮れながら、奥様になんと声掛けをしていいのか分からずただ側に付き添うのみでした。

私達スタッフもお声掛けが中々できず、ただただ静かにお式の準備をさせていただいていました。

しばらくし、ご近所の方や友人の方がお参りにみえだしました。
はじめこそ次々お参りにみえる知人の方に涙を隠すことができず、挨拶をされていた奥様でしたが、忙しくなるにつれ気力を取り戻し皆様の対応をされはじめ、表情は先程までと違い少し笑みも浮かべておられました。

まわりにいらっしゃった親族の方々も安心したようで、皆様それぞれ話が弾みだしました。

良かった。でも...。

お一人だけ、故人様のそばから離れず肩を震わせている方がいらっしゃいました。
ご家族のどなたが声をかけても故人様から離れず全てを拒絶されているようでした。

それは故人様のお孫様。

長い間故人様のそばに付き添われていました。

お別れの言葉を言ってくださいましたが、その間も、涙が止まりませんでした。

「じいちゃんは優しくて時々おちゃめで、自分達といつも遊んでくれた。
そんなじいちゃんと、こんなに早く別れる事になるなんて凄く悲しい。」
泣きながら一生懸命お話ししました。

そんなお孫様の言葉を聞き、私も胸が締め付けられました。

皆様も同じ思いだったのでしょう。あちらこちらのお席から嗚咽がもれていました。

お別れの時

奥様はご主人に触れ泣きながら話しかけていました。

「おとうさん。おとうさん」と。

突然の別れは身を切られるように辛いのだろうと、奥様のそのお姿を見ながら私もとても辛い気持ちになりました。

遺族親族の方々にとっても辛く悲しいお式でしたが、沢山の知人友人の方にお花を手向けていただき、
「きれいになったよ。良かったねー。」
と言っていただいた事はとても嬉しかったようでした。

お孫様も少し元気を取り戻し皆様と共に式場をあとにされました。


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