家族葬エピソード210:「母に似ていると言われると嬉しい」

故人様は50代の女性。2人の子供、長男、長女さんがおりました。
喪主はご長男様が務められました。
喪主様は社会人でしたが、ご長女様はまだ大学生。
まだ...若い子供達を残して、病気の為に逝ってしまった母。
どんなに無念な想いだったのだろう...
考えただけで、胸が締めつけられる想いでした。

お身内だけでのお見送りの予定でしたが、喪主様の会社関係の方などもお参りにみえました。
兄妹2人は、お参りにみえる方を、入り口付近で2人立たれたまま、お出迎えしていたので、
お席にご案内し、「お席にてのご対応で大丈夫です。私達スタッフも、すぐそばにおります。
何かありましたら、すぐにおっしゃってください。」とお伝えすると、お2人とも安心した
顔をされていました。

故人の遺影写真が、淡いピンクの背景で優しく可愛らしい笑顔でピースしている写真でした。
ご長女様に「写真はいつ頃撮られたお写真ですか?」とお伺いすると「25年程前の写真なんです。母はマネキュアなどもしていて。洋服も、とてもお洒落でした...この、母の顔と私...とても似ていると言われて、私はとても嬉しいんです」
本当に嬉しそうな表情でお話された、ご長女様が印象的でした。

お柩の中には、ご長女様がお母様に宛てたお手紙、お菓子やポテトチップスなど一緒に納められていました。
「それも母が大好きだったんです」
お母様の事を話す時、嬉しそうな顔をされるご長女様でした。

心の中では「母の死」という深く大きな悲しみを抱える中...しっかりと皆様の対応をされていて感心しました。
喪主のご長男様は、何をどうしていいのか分からずといった様子でしたので、すぐに対応出来るよう、様子を見ていました。
頂いている、ご弔電の拝読の順番等も、一緒に話しながら決めました。
その後に喪主様に「お母様はどんなお母様でしたか?」とお聞きすると...ゆっくりと
「母は... とても過保護でした。自分はそれが嫌で、家を出ました... それで、このように
なってしまいました...」と返ってきました。
自分を責めているように感じられました。

喪主様に、「私にも、喪主様と同じくらいの子供がおります。母にとっては、大きくなっても息子は息子であり...母親にとっては息子というのは、かわいい存在なんです。きっと、お母様もそのようなお気持ちだったと思いますよ」
私も自分の子供と重なり、複雑な心境になりました。
喪主様の目に涙が浮かび... 私も泣きそうになりましたが、ぐっと堪えて我慢しました。
喪主様には私が伝えたかった事が分かってもらえたかなと感じました。

ご長女様より、お預かりした、お母様のスニーカー、御朱印帳など、お別れの際にお花と一緒にお柩に納めてもらいました。

ご出棺の際、霊柩車に乗車された、ご長女様に最後に丁重にお礼を言われました。
これからの日々、色々な場面で寂しい想いをされるかもしれませんが...私は心の中で「頑張って!」という想いを込め...
お見送りさせていただきました。

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