家族葬エピソード208:「残された方を支える人がいる安心」

「ずっと2人きりで一緒に居たから明日からどうしよう」と不安そうに呟かれたのは長年連れ添われたご主人を見送られた奥様。
2人で過ごされたご自宅から式場までスタッフがお迎えに行くと「今日はお世話になります」と小さい体で風呂敷を抱えて出てこられました。
式場に着くとその風呂敷から新品のズボンを出され「これ、トキハで珍しくあの人が買って欲しいって言ったズボンなんよ。気に入ってて結局1回も履かなかったけど棺に入れて良いやろうか?」とお話されたのでお別れの花入れの時にスタッフと一緒にお柩にお供えいたしました。

「昨日沢山泣いたからもう涙は出らん」と来てすぐの時は言われておりましたがスタッフと一緒にお柩のお顔をご覧になりながら思い出を一つ一つお話されていると少しずつ涙交じりになり「寂しい...まだ一緒に居たい」と零されており、大切な伴侶を失った悲しみは計り知れないものでそんな奥様に私たち葬儀社はどれだけ寄り添えるだろうかと感じました。

お柩の中の故人様は微笑んでおられるような穏やかなご表情でお化粧をされずとも頬は赤く顔色はとても良く見えました。
「あの人はいつもほっぺは林檎みたいに真っ赤で可愛らしかったんよ」と頬に優しく触れられ目を細めておられました。

花祭壇中央のご遺影写真を見つめられ「花が大好きな人やったけん。やっぱりこの祭壇にしてよかった」と喜ばれてお柩にたくさんのお花を入れ足先までお花に囲まれた故人様に「私の事向こうの花畑で待ってるんよ」と優しく声をかけられておられました。

今回は儀式的な事はされず奥様とご主人が通われていた施設の方、お2人でのゆっくりとお別れをされご出棺となりました。
「大変お世話になりました。みんなに優しくしてもらってじいちゃんも安心してると思う」と優しいお言葉を頂き、私達もこのお別れにお手伝い出来て良かったと思います。
最後にご参列された施設の方より「おばあちゃんのことはこれから地域支援など色んな形で関わっていこうと思うので安心してください。今日はありがとうございました」ともお話を頂きこれから1人になる奥様の事を考えてくれる人が居ることに安心いたしました。

色んなお別れの形が増えていく中、故人様とご親族やご友人がゆっくりとお別れができるお手伝いをきっかけとなりました。

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