家族葬エピソード120:「30年以上ずっと一緒にいて、嬉しかったですね」
誰もいない式場でただ一人、静かに座って祭壇の遺影写真を見つめられていた故人様の御主人。
哀愁漂うような後ろ姿に引き寄せられるようにそっと近付き声を掛けました。
「何にも考えてなかったから、どうしたらいいかわからなくて...」
「急にこんなことになるもんなんやなぁ...」
と、悲しいというよりどこか現実味がないような表情で遺影写真を見つめながらポツリ、ポツリとお話ししてくださいました。
故人様と御主人の間にお子様はおらず、30年以上もの間ご夫婦二人三脚で歩んでこられ
「仕事で転勤が多くて、あちこち移り住んできたけど愚痴を一度も言わないで僕に付いてきてくれて...
優しくて...もの静かな人なんだけど、いつもいろんな話を聞いてくれてね...」
と。
故人様は奥ゆかしい女性だったのだなと思いながら、故人様のお好きだった事やお好きな食べ物をお伺いしましたが、思い付かないような困惑したご様子でした。
突然の感情の変化に追い付いていないご様子の御主人がとても心配になったのを覚えています。
義姉様が到着され、故人様のお顔をご覧になり
「とっても綺麗になって...良かったねぇ」
と声を掛けられ、御主人と共に椅子にかけられお話しされておりました。
皆様に珈琲をお出ししたところ、故人様が珈琲がお好きだったと教えてくださり、御主人もハッとされた表情をされ、故人様もご一緒にと皆様と同じ珈琲をお供えさせていただきましたら大変喜んでくださいました。
「珈琲好きやったけん、嬉しいなぁ」
と故人様に声を掛けられ、故人様との思い出話に花が咲き、御主人もここで初めて笑みが溢れました。
お式は滞りなく進み、御主人より御礼のご挨拶がございました。
ご参列いただいた皆様へ感謝を伝えられると、故人様とのたくさんの思い出が走馬灯のように駆け巡ったのでしょう...想いを言葉にしようとしますが嗚咽を漏らし涙が止まりません。
ひとこと、ひとこと、言葉にする度に涙で声を詰まらせながらもご自身の言葉で一生懸命に故人様との思い出をお話しされました。
「こうゆう形で別れることになって、本当は悔しいですね...。
30年以上ずっと一緒にいて、嬉しかったですね...本当に楽しかったです...」
と。
ご夫婦の深い愛に触れ、御主人のそのお言葉、そのお姿がとても印象的でした。
最後のお花入れでは、ひとつひとつのお花に想いを込めて皆様の手で故人様へ手向けられ、労いと感謝のお言葉を掛けられました。
皆様涙を浮かべながら故人様を見つめられる中、御主人は溢れる涙を何度も手で拭い、言葉はなくとも故人様の頬に手を添え、心の中で想いを伝えられているようでした。
故人様のお父様は、故人様のお顔をご覧になる度に涙を溢されておりましたが、最後は
「ちぃそう(小さく)なったのぉ」
と苦しい表情で故人様を見つめ、別れを惜しまれました。
お式の終わりのご挨拶で初めて涙を溢された御主人。
感情の変化に追い付いていないご様子だった中で、ようやく涙を流された御主人のお姿に少しホッとした私がいました。
共に過ごしたかけがえのない大切な人の死に直面すると、見た目や思っている以上に心に受ける多くの感情はその人により大きく異なります。
今の想いを言葉にしたり、涙を流したりすることはとても大切だと感じます。
良いお見送りができるようお手伝いさせていただくだけでなく、ご遺族様の声に耳を傾ける中で心に向き合い、少しでもお気持ちが和らぐよう寄り添うことは心のケアにも繋がります。
私自身、日々大切にしていることを改めて強く感じることができたご葬儀でございました。
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