家族葬エピソード977：「朝、元気だったのよ」
故人様は60代の男性の方でした。
立ち合われている奥様は混乱し、とてもお話をうかがえる状態ではありませんでした。
「朝、元気だったのよ」
奥様に付き添われておみえになった親族の女性がそっと教えてくださいました。
朝、いつものように「いってきます」と言って会社に向かった。
それが最後の会話だったそうです。
奥様は泣き崩れるわけではありませんが見るからに憔悴されていました。
そんな奥様を3人の娘さんと、息子さんが懸命に支えていらっしゃり、
これからの段取りを立ててくださいました。
しばらくしてからやっと少しずつお話ができるようになり、ぽつりぽつりとお話しをしてくださいました。
そして、「まだ信じられない。顔を見てると起きあがりそう」と...
溢れてくる涙を拭いながらつぶやきました。
そんな奥様と話していると、いつの間にか自分と重ね合わせていました。
両親がいて、主人がいて、子供がいて...。
先立たない限り私も同じ思いをするのでしょう。
憔悴している奥様を前に、ただ、黙って寄り添う事しか出来ず...もどかしい思いをいたしました。
何か出来ることがないのか。
しばらく考えましたが、やっぱり他に思いつかず、黙って寄り添うことが、
今の奥様には一番良いのではないか...と続けて見守る事にいたしました。
式場を出発するとき、少しだけ微笑んで下さったことが今でも目に焼き付いております。
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